高輪消防署二本榎出張所


 古川橋から桜通りを五反田方面に車を走らせると、「都ホテル」脇を過ぎるあたりから右手通り沿いに内井昭蔵設計の「明治学院大学」が見えてくる。その偉観に否応もなくチラチラと視線を盗られながら脇見運転をしていると一瞬、左手のビルの合間に灯台が見えた。こんな都心に灯台などあるはずがないし、聞いたこともない。しかし丸い小窓つきの白い円塔の上に青いアンテナとおぼしきものも乗っていた。灯台のほかに思いつかない。確認すべくあわてて次の交差点を左折すると、坂の上に、その灯台を背中にしょった白い建物があった。坂を上り近づくにつれ足元が徐々に見えてくると、その建物の車庫には真っ赤な車が並んでいた。

 現役の消防署である。正確には「高輪消防署 二本榎出張所」。“二本榎”とは聞かない地名だがそれもそのはず、明治41年の開署時の町名で現在は存在しない。ちなみに現住所は 港区高輪2−6−17、当時は 芝区二本榎2−15となっていた。この建物は、高輪消防署の本署として昭和8年12月に完成。その後何度か改称があったが昭和59年、白金に本署が新築、移転したため“出張所”となった。「高輪消防署前」交差点 北東の角地に4層からなる望楼を頂く3階建てのシリンダー、それより北と東に道路に沿って二階建てのウィングを90度に開いて配している。アンテナかと思った望楼頂部の青い塔は昭和59年、東京都の「文化デザイン事業」をふまえて東京芸大 前野教授によるデザインで設置されたシンボルタワーであった。

 完成当時は海岸線もずっと近く、海抜25mの小高い立地のため見晴らしもよくきき、望楼からは東京湾が一望できたようだ。海からもよく目立ち、ランドマーク的存在だったのだろうが、その形態から「岸壁上の灯台」とか「海を行く軍艦」などとも呼ばれていたらしい。堂々としていながらも優美さを兼ね備えるそのデザインには、まさにいい得て妙である。


APC編集部  島尾 望

建物概要
名称 高輪消防署 二本榎出張所
所在地 東京都港区高輪2−6−17
設計者 警視庁総監 会計営繕係
施工者 間組
竣工 昭和8年12月28日
敷地面積 459.21m2
建築面積 275.16m2
構造 鉄筋コンクリート造
規模 地上3階