いつの時代も超高層は人の心をときめかす。遠望すれば、その都市のアイデンティティを表すランドマークとして、また近くからはその巨大スケールの迫力に圧倒される。
さらに夜景はそれらに美しさを追加する。東京の超高層群は遍在している。

西新宿を筆頭に、他はわずかだが池袋、大川端、それに建設中の汐留地区ぐらいか。ところがそれらの在東京超高層群仲間に新規参入したのが、外国人でははじめてとなるシーザー・ペリ(米)設計による「愛宕山グリーンヒルズ」の中核施設、「モリ・タワー」と「フォレスト・タワー」である。

著者紹介
淵上正幸 
Masayuki Fuchigami
建築ジャーナリスト&エディター
1969年東京外国語大学フランス語学科卒業。71年新建築社入社、85年エー・アンド・ユー社に移籍、「a+u」誌の編集に携わる。90-98年「コンペ&コンテスト」誌編集長。現在、「ワールド・コンペティションズ」誌編集長。
周知のように、愛宕山は江戸時代から戦前にかけて梅や桜の名所として知られたところ。山上には徳川家康の命によって開山した愛宕山神社があり、愛宕通り沿いには曹洞宗の名刹青松寺もある由緒ある土地柄である。その愛宕通り沿いに、2棟の超高層が建ち上がったのだからこの界隈を知っている人はビックリした。何しろ敷地はお寺の境内なのだから。この一見アンバランスとも思える組合せの印象は、秀逸なデザイン・コンセプトによって巧みに解消されている。「建築は連携して都市を生かし、活気あるものへと変換してゆくためのインター・フェイスである。都市空間の隠れた個性を建築を通して引き出し、価値へと変換してゆく戦略が重要となっている」(光井純、シーザ・ペリ・ジャッパン代表)。愛宕山の緑を生かした超高層足元回りの公園的ランドスケープは、このコンセプトから生まれた。地域に密着する和める外部空間となっている。また青松寺の伽藍形態に対応した在り方として、建物の頂部を曲線状にセットバックさせて高度感を軽減し、さらに平面形の角をとることによってヴォリューム感を減じている。オフィス・ビルである高い方の「モリ・タワー」は、頂部近くで先細りした形。集合住宅である「フォレスト・タワー」は頂部で円形となっている。超高層のなかった愛宕山地区に出現したペアのタワーは、あたかも2本の大樹が対話をしているようなスマートなランドマーク性を発揮して、近隣街区に受け入れられている。